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とwenger2)、BahrとSejersted1)の報告がある。ChadとWengerは、EPOCは部分的には体温の上昇と代謝基質により説明がつく、としているものの本研究で問題とした心拍数については測定がなされていない。BahrとSejerstedはChadとWengerよりも多くの測定項目を14時間にわたって観察している。その中で心拍数の亢進状態が続くことを述べているが、それについての議論はない。なお、彼らはEPOCについては完全には説明できなかったと結論付けている。
以上のように、朝練後に見られる心拍亢進の原因を検討したが、有酸素性代謝機構の亢進は明確とはならず、体液量の減少による交感神経の賦活もその要因とは断定できなかった。しかし、朝練の内容によっては心拍亢進の原因が明らかとなる可能性も否定できない。本研究テーマの解明は今後の課題と考える。

まとめ

成年男子5人を対象に、朝練後に見られる心拍数の亢進状態について、その生理学的背景を検討したところ、次のような結果を得た。
1. 朝練としての運動は55%VO2max強度での自転車こぎで、午前8時から9時までの1時間であった。
2. コントロール実験と比較して、朝練後の心拍亢進は少なくとも午後3時まで観察された。
3. 心拍数以外で朝練後に有意な増加が見られたのは酸素摂取量、最大血圧、直腸温、PV、乳酸、カリウム、アドレナリン、ノルアドレナリン、アルドステロンであった。
4. 心拍数以外で午後3時までに有意差が見られたのはPVだけであった。PVは朝練後に有意に減少した後、午後3時まで増加し続けた。
以上のように、朝練後に見られる心拍亢進の原因を検討したが、その要因として考えられる有酸素性代謝機構の亢進は明確とはならず、体液量の減少による交感神経の賦活もその要因とは断定できなかった。結論として、朝練後の心拍亢進の原因を本研究では明らかにはできなかった。

 

文献

1) Bahr,R.,and O. M. Sejersted:Effect of intensity of exercise on excess post−exerciseO2 consumption. Metabolism 40:836−841、1991.
2) Chad,K. E.,and H. A. Wenger:Thee effectof exercise duration on the exercise and post.exercise oxygen consumption. Can. J. Spt.Sci. 13:204−207.1988.
3) Dill, D. B., and L. Costill:Calculation ofpercentage changes in volumes of blood,plasma,and red ceus in dehydration. J. Appl.Physiol.37:247−248,1974.
4) 北川薫、山村千晶、高見京太、田鴬之貴:早朝練習の生理学的研究一高校柔道部員について−。体育科学 24:41.46.1996。
5) 真島英信:生理学 改訂18版。pp389、文光堂、1986。
6) 佐々木隆、千葉喜彦(編):時間生物学。pp11.13,pp149、朝倉書店、1978.
7) Quinn,T.J.,N. B. Broman,and R. Kertzer:Postexercise oxygen consumption in trainedfemales:effect of exercise duration. Med.Sci.Sports Exerc.26:908−913,1994.

 

 

 

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